- どうやって食って行きゃいいんだよ! -
I want to go there - Emain Macha


ガフロド 作


さて、話はこの間まで遡る。
俺はダンバートンとイメンマハを交互に行ったり来たりして、モノを売る仕事をしていたけど、ある日大きな事件が起きて、その道が通れなくなっちまったって言うんだ。何も持ってなくても大変なのに、荷物まで担いでもう~まじ、死ぬ思いだったよ~。けどな、しょうがねーじゃんよ!俺だけが通れなくなったわけじゃねーからな。

だけど、話を聞くと、それが単純な事態じゃなくて、人工的に道を遮断したって言うの。封印…何とかでさ!封印石だっけ?近くに行くと変な思念メッセージが頭に浮かぶらしいけど、それがそれを崩すための条件みたいなもんだってよ。俺、その話を聞いてから、思わず笑っちまったよ~。世の中生きて行くことだけでも大変なのによ、なんてくだらねーことしやがるんだって思ってさ!

とにかく、しばらくしたら王立魔法学会の学者達が封印石の調査と除去をするからって出発したらしい。聞くと、俺が見たのが初めてだからかもしれんけど、意外とそんなことがしばしば起きるらしくて。俺がまた顔が広い商人だからよ~一度興味を持ち始めると情報を集めるのはすぐだから、それについてちょっと調べてみたんだよ。
・・・皆もう諦めていたんだよな~。よく起きることだから封印石は学者以外の人は興味もないんだって。冒険者や旅行者達は封印石を崩すことが自分の力と知恵、勇気を証明できるもんだって思ってるらしく、結構すごい意味のあるもんとして扱ってるけど・・・まあ、俺らみたいな平民にはただしばらく仕事がねーってしか思えねーよ。

とにかく、皆これで結構不満があったようだけど~。封印石のせいで各地の交通も途絶されることがかなり多かったようで、むしろ魔法学会でもこれを専門に研究する学者達がいるそうだよ。まっ、納得はいく話なんだけど。

けど、そうは言っても、この魔法学会という奴らが実際封印石を直接崩した実績はないらしいじゃん。ただ皆知ってる思念メッセージの内容を何かすごいもんでも発見したように説明しては撤収するらしい。ちくしょう!これだからちょっと学歴のあるっていう奴らは…実生活にはあまり役に立たない理論を信じて、それだけで満足してる奴らのことだから~。見なくても今度もこの間のように誰でもわかる思念メッセージの内容を解けといて今度はこんな方法で崩してみる…っていう発表だけするだろう、どうせ。魔法はおいてどこへ使うんだい~。

だけど、魔法師っていう人達もそんなに頭の回転がわりーぃ人間じゃなかったみたいね~。ああ~こんな無為な歳月を送って~俺の一日の売上がいくらなのか知ってるかって、ため息ばっかりついてる頃、商人ギルドからこんな噂を聞いたのさ。王立魔法学会で数年間の研究でどの封印石でも一気に崩せる魔法の呪文を完成させたって言うんだ。やるんだったら早くやってよって感じ!もうちょっとしたらまた仕事が出来るっていう話を聞いて、まあ、安心したんだよな~。

まっ、結構休み過ぎたっていうのもあって、封印石が崩れる光景も見たいなと思い、魔法学会で封印石を破壊するって公表した日、俺も現場に荷物を積んで走って行ったんだよ。イメンマハに行く道が開くとすぐ行けるようにさ。人は何より真面目ではなくちゃ!

朝早くそこに着いてみるとすげー光景だったよ。
かなり高級っぽいローブを着ている人達があっちこっち試薬をばら撒いて、スクロールを貼って、結構面倒くせーことしてたんだ。よく見ると同じところにずっと貼ったり、取ったりしてる人もいるし、何もしないで忙しそうに歩き回ってる人もいるし・・・あいつらがあれで俺らの税金で食ってるのかと思うと、俺の中から先に何かが崩れ落ちそうだったけど・・・まあ、いいっか!封印石を壊してくれるって言うし。ぶっちゃけ、大事なのはそれじゃねー?

壊す前に封印石に関しての噂が本当なのか確認して、ついでに手でちょっと触れてみると・・・すげーよ!噂で聞いた思念メッセージがまじで頭に響いてくるんじゃん!

[長い人生を送り、成長した者のみ、この封印を崩せる。]

これがその条件ってやつか!よし!

日が中天にかかる頃、見る人も結構集まって、用意もある程度できたような感じもして、とうとうかなり年のたけたように見える男が豪華なロブを着てその前に立った。ちょうどその印象が部屋で引きこもって魔法しか勉強してなさそうな人だった。あれくらいだと長い人生を送り、成長した人だよな~…って思ったけど、周りの人に聞くと直接壊すのではなく、魔法を使って壊すらしい。この呪文を使うと条件を自動的に把握して封印石を崩せるってよ!まっ、これからできる封印石にも使う方法だから、どっちにしろ、封印石さえ崩れれれば問題ねーっしょ。

とうとう魔法の試しが始まって。
その年のたけた魔法学者は平面に魔法陣を描いて、知らない呪文を言いながら手から光を出し始めた。素晴らしかったよ!魔法師って実用的な職業じゃねーけど、少なくともかっこいい職業だっていうのはその光景を見てわかった。

こうみると魔法ってすげーよな・・・って思ってるところ、その魔法学者の呪文の声が高まって来て、ついにその封印石の周りを光がせき立てて、でっか~い爆音と一緒に煙が湧き上がったの。耳が詰まるくらいだったぜ!俺は喉がひりひりする煙を手で横に振り巻いて、目を封印石があるところに向けたんだよ。
ついに開いたんだね!これからあそこを通過すればいいんだな~。

・・・って思ったら、封印石はそのままじゃねーかよ!魔法学者達もびっくりしてさ~ざわめきながら、戸惑う表情で…見てる人もそれぞれぶつぶつ言い始めたの。ああ~あんまり良い空気じゃなかったな~。

魔法学者の何人かが封印石まで走って行って、かれこれ調査してたよ。中では足で封印石を蹴飛ばす奴もいてさ~。無能な奴ら…でも、なんかさ~・・・調査してた奴らが一人一人封印席を叩いてみては、すごい発見でもしたようにぞろぞろ走って行って、何って言ってんのかわかんねーけど、こそこそ話してんじゃん。

こっそり横から回って行って、俺も封印石に手を触れてみたのさ。
しかし、そこから出てくる思念メッセージ、それがもう~傑作だったよ!

[長い人生を送り、成長した人のみ、この封印を崩せない。]

崩せないと?確かに崩せるだったよな!条件が反対になったのかな~?俺が知ってる限りでは封印の条件が変わることはないって聞いたんだけど…それじゃあ、答えはひとつしかねー。さっきの魔法で封印条件が変わったべ。封印石を壊したんじゃなくて封印条件を変えたんだ。ああ~素晴らしいよ!あれだけ騒がしく準備して結局これかよ!

しかし、この魔法学者の奴らはすげー嬉しそうで。お互い抱き合って、すげー喜んでたぜ。まるで最初から条件を変える魔法を試したかのように。さっきその魔法をかけた奴が出てきてこんな話をしてた。魔法を試す前にちょっとした誤りがあって、たとえ封印石は破壊されなかったが、今とても大事な事実がわかったって、皆喜べと。くそっ!

けど・・・魔法の条件を変えて、条件を易しくすれば、また意外と壊せるんじゃねーか?だから~、もうちょっと見ることにしたよ。魔法学者も俺と似てる結論を出したようだよ。で、また試す準備をしてた。

・・・その夕方、俺はダンバートンで気分だけ悪くなって帰って来た。あのきもい奴らは一日中封印石の条件だけを変えるばっかりで遊んでんの。しかも、最悪なのは魔法を試せば試すほど、魔法力が条件に介入してもっとややこしくなったってこと。

何回試したかわからんけど、奴らもこれだとイメンマハの封印石を永遠に崩せない条件にするかもって危機感を感じたのか、次に新しい封印石ができたら自分達が発見した方法を追加でテストしてみることにしたって。結局最後に変わった条件はこうだってよ。

[同じ時間により多く成し遂げた者がこの封印を崩せる。]

くそっ、笑っちゃうよな~まじで!
・・・そして、次の日にゃいつものように魔法学会の説明が続いてたんだよ。

[・・・全ての人間に与えられた時間は限られていて、この時間をより価値のある時間にして、多くの経験を積み、これを自分の成長の機会にする者のみ、この封印石を崩せるという意味になる。]

まあ~良くもやってくれたな~。てか、この事を指して、生兵法は大怪我のもとって言うんだろう。

しかし、イメンマハに行ける道はいつになったら、開くんだろう。
まっ、直接崩してもみたいが、俺がまた忙しいからな~。
・・・誰か挑戦者いねー?