- 復讐の書 -
Book of the revenge


マウラス 著


目次

はじめに
復讐の第一声
最後に

彼らに秩序というものはない…
己とは異なるものを
憎み、退け、苦しめる。
己の欲望の為なら
全ての物を破壊する。
彼らの言う神の恵みとは
彼らだけのもの…
我らはその様な人間に憎悪する。
この憎むべき人間を
我らの命と比べうるだろうか。
世界を破滅に導く人間どもに呪いあれ…

はじめに

魔族たちよ
人間でありながらポウォールの道を歩む者、即ちポウォールの道を歩むも人間界より抜け出せずに苦しむ、このマウラスの言葉に耳を傾けたまえ。
今、私が叫ばんとすることは人間に対する復讐。これは私の心から出た言葉ではなく、魔族としてなすべき道理を説くものだ。この世界に刻まれた秩序と創造主の意志に対する確信から、復讐を三度叫ぶ。この本を理解し、その意味を心に深く刻み込みながら読みたまえ。

復讐の第一声

人間は混乱の中から生まれた存在。
彼らは変化と成長、改善と向上という大義のもと、既存の秩序を破壊し、己の欲望の為だけに生きる存在。その上、己の欲望以外を否定することに何のためらいも感じない。
世界の調和と美も、人間の欲望の前にはその光を失う。仮に欲望に耐える者がいたとしても、彼らはそれらを当然の様に排除する。
彼らのいう賢明さとは、己の欲望を抑える者ではなく、己の欲望をどこまでも増大させた者の為にある言葉である。
己の欲望に忠実である者の力を認め、それを美徳とするのが人間の本性だ。

彼らは変化と成長を主張する。しかし残忍な人間の本性が変わる事はない。
また、己の邪悪さを認めずに己とは異なる存在にその姿を投影し憎しみ抱く。そして己の内面に潜む悪の心から目を背ける。そして自らを善良なる存在と偽り、神の恩恵を受けるに値する価値のある存在だと信じている。
悪と偽りと破壊の存在。
それが人間だ。
神の意志を敬う我らが、永遠に憎み抹殺しなければならぬ存在。
それが人間である。

ポウォールは秩序から生まれた存在。
己の繁栄の為に世界を破壊し、己の意志を押し通す人間とは対をなし、調和と均衡そして秩序を保つ事を第一の徳目として信じそれに従う。
神の被造物として守るべき使命を理解し、神から与えられた知恵と力で弱者を守り、強者の力に屈する事はしない。
全体のために己を犠牲にする事を厭わず、己の欲望が単なる幻影に過ぎない物だということを知っている。

弱者に対する哀れみと配慮から、何をすべきかを考え行動する。そして、己より弱い者の役割と苦しみを理解し、彼らへの援助をいとわない。
我らの内面にあるのは神の意志に従おうとする使命のみ。真実と調和と協力の存在。そして創造主の意図を理解し、それに従う唯一の存在。
思い出すのだ!ポウォール本来の姿を!
神からの恩恵がないこの世界にあっても神を恨むことのない存在。
それが我らポウォールである。

この叫びを聞く者よ、ティルナノイを思い出せ! ティルナノイ、そこは4人の神の秩序と意志を具現化した楽園。エリンの秩序がティルナノイの存在を完全な物とし神の摂理はさらに輝く。

しかし人間の欲望は神から授かった自然に満足はしない。むしろ自然を破壊し、輝く若さの地ティルナノイに欲望の手を伸ばす。

不完全な存在ながら神々の世界で生きようとする彼らの欲望を傍観してはならない。彼らがティルナノイへ侵攻した時の悲劇を想像せよ。この世界を構成する秩序と法則が破壊されていく悲劇の中で、我らポウォールの心の奥で響き渡る慟哭を想像せよ。

最後に

この様な罪深い人間が永遠の地への道筋を探し、そこに足を踏み入れるのを傍観していられようか。
我らは人間どものティルナノイ侵攻を座視してはならない。
ティルナノイへの降臨は魔族の力によって叶えられる時のみ真の価値がある。
それはポウォールの美徳を崇めるマウラスの意志である。そして我らをご覧になっている女神の意志でもある。
まずは、神々の法則の上に強固に根づき、輝く楽園ティルナノイまでも手に入れようとする人間に対し、神の意志のもとに鉄槌を下そう。彼らが我らに犯した全ての蛮行と我らに着せた汚名を忘れてはならない。今こそ我らがこの世に真の調和と均衡の秩序を実現するべきである。ティルナノイへの降臨は、人間の抹殺後にこそ正当性を持ちうるということを忘れてはならない。

この世界に真実の目を開かせようとする者は次の復讐の叫びを聞くがいい。





彼女がくれた証を見る度に
人間に対する怒りが込み上げてくる

しかしその怒りもいつしか
妻や子供に会えない悲しみとなり
私はその悲しみに耐えることができない

気が付くと私は大切な証を失っていた
しかし心のどこかで安心をしている
あの悲しみから逃れられる事ができるのだから…
私が考えなければならないのは、人間に対する復讐
そう、女神の名の下に行われる復讐のみ
人間界の束縛から抜け出し
魔族の志を思い起こそう