- アスコン宛ての手紙 -



"たまに読み返すと本当に笑える。ちょっと小遣い稼ぎで始めたことがこんな大金になるとは夢にも思わなかった。残念ながらアスコンとかいうやつの両親はもういないが、俺にはアランズが残っているからあんな貧乏人どもはどうでもいい。"

<1> 息子よ!お前が去ってからもう10年以上経ったのだな。ビデックさんにお前が先日腰を痛めて苦労しているという話を聞いた。治療に使うホワイトハーブとブラッディハーブを10束ずつ送るから早く元気になるんだぞ。
私たちは今もビデックさんと一緒にお前をカブ港に連れ戻す方法を考えている。私たちがもう少し金持ちだったらよかったのだが…。
ビデックさんはお前を連れ戻すには1000万ゴールド必要だというのだが、この10年余り一生懸命集めたが100万ゴールドほどにしかならなかった。
とりあえずビデックさんが100万ゴールドでどうにかしてみると言ってくれたから先月すべて渡したが、
金額が足りないからまだ何も成果がないらしいな…。
どんなに困難なことがあっても、私たちは決してお前を諦めないぞ。
お父さんと、お母さん、そして妹もみんな健康に暮らしている。愛しているぞ、息子よ。体には気をつけなさい。
-アラスドル

<2> 私のかわいいアスコン、元気にしているかしら?
ご飯はちゃんと食べているわよね?ビデックさんから最近海賊たちが大きな貨物船をひとつ略奪したおかげでお前の生活も少し良くなったと聞いたわ。
海賊たちに全財産を奪われたかわいそうな船員たちを思うと涙が出るけれど、そのおかげでお前の生活が良くなると思うと嬉しい気もするわ。
今回ビデックさんがまた200万ゴールドが必要だとおっしゃっていたけれど、今の私たちにはどうすることもできないの。

実は…最近お父さんの具合が良くないの。
それで数週間働けなくて今すぐお金を用意するのは難しいのよ。私たちにお金があったらお前を連れ戻せたろうに……。
母親としてお前に何もしてやれなくてごめんなさい。
きっと私は前世でたくさん罪を犯したのでしょうね。

あ、アランズの話をしてなかったわね。
お前の妹がもうすぐ結婚するかもしれないの。
イメンマハで観光に来たビゴリンという紳士が偶然アランズを見かけて一目ぼれしたみたい。彼ったらここ何日間かアランズに一生懸命プロポーズしているわ。
歳は少し上だけれど誠実でいい人そうで、アランズに優しくしてくれそうだけれど…
あの娘に彼のことをどう思うかと聞いても、お母さんには正直に話してくれないのよね。
もしアランズがあの方と結婚すれば200万ゴールドくらいは問題ないだろうに…。
この問題のせいで最近お父さんとお母さんはたまに口ゲンカをするの。
どうもお父さんは相手の歳が気になっているみたい。
でもお母さんから見たら、白髪が多いせいで歳に見えるだけで実際はとても若くて健康だと思うの。
数日前にビゴリンさんが召使いたちと一緒に釣りに出て、4mの大型タチウオをひとりで釣ったそうよ。
そのタチウオを私たちにくれて、それを食べたおかげでお父さんの具合も少し良くなったのよ。

とにかく、家のことはあまり心配しないで。ビゴリンさんとアランズの結婚については、最終的にはアランズに決めさせるつもり。
アランズもそろそろいい人を見つけてお嫁に行かなくちゃいけないのに心配だわ。
ビデックさんにもう出発するからと急かされちゃったわ。
このへんで終わりにするわね。私のかわいいアスコン、体に気をつけて。
-グウェンリアン

<3> ああ…お兄ちゃん…!!!
とうとうお父さんが死んじゃった…。
お父さんの容体が日に日に悪くなっていくのに、私はイメンマハから出られなくてお父さんの死に目に会えなかった…。
私の夫のビゴリンさんは優しいときはパララの光よりも温かいけれど、ときどき冷たいラデカの表面よりも冷淡になるときがあるの。
どういうわけかビゴリンさんはお父さんとビデックさんをとても嫌っていて、私がお父さんやビデックさんの名前を口にするだけですぐに機嫌が悪くなって声もかけられないほどなの。

お兄ちゃん!私はいつまでこんなふうに生きなければならないの?
お父さんが死んじゃったから、もう私は頼るべき場所がないよ。
お兄ちゃんが傍にいたら、あの夜みたいに私をいつまでも守ってくれたよね?
ビゴリンさんはお父さんのお葬式が終わったらすぐにイメンマハに帰ってこいと冷たく言った。
でも独りぼっちのお母さんはどうしろと言うの…?
それにここに来るときは私を守る'警護員'という名の'監視兵'まで付けさせたのよ。
何年も見ない間にすっかり老いてしまったお母さんを見て悲しかった…。もう二度とイメンマハには戻りたくない……。
昨日もお母さんと抱き合って何時間も泣いた。お母さんは本当にお兄ちゃんに会いたがっているのよ。お父さんも最期にお兄ちゃんに会えずに死ぬのが心残りだって…。
お母さんだけでも長生きして必ずお兄ちゃんに会えって…何度も頼んでいたそうよ。
お母さんのやつれた手を見てすごく胸が痛くなったわ。ああ…。
お母さんをイメンマハに連れていけたらどんなにいいか…。
でもお母さんは絶対にお兄ちゃんが帰ってくるまでカブ港を守らなければいけないって意地を張っているの。
やっとビゴリンさんにお母さんをイメンマハに連れてこられるよう何度も頼んで許しをもらったのに、結局お母さんが意地っ張りだからイメンマハに連れていけそうにないわ。 アレクシンがいなければ私がカブ港に残るのに…。
私がいなかったらアレクシンがお母さんのいない子だって後ろ指をさされるでしょ?
あの大邸宅で面倒を見てくれる人もなくひとりで寂しく暮らすことになる……。

あ、お兄ちゃんはまだ見てないよね?
アレクシンは本当にかわいいのよ!お兄ちゃんに送るために、特別にタラまで行ってアレクシンの肖像画も描いてきたから同封するね。
お兄ちゃん!それから今回ビデックさん便で10万ゴールド送るから、おいしい物を食べていい服を買ってね。
もっと送りたいんだけど、ビゴリンさんに隠れてお金を集めるのが難しくて…今回はこれだけになっちゃった。
私のことはあまり心配しないで。ビゴリンさんも年を取って気難しくなっているだけで、根は決して悪い人じゃないわ。
お金の問題さえなければ普段は親切で細やかに接してくれるもの。
ちょっと前にビゴリンさんからきれいなドレスももらったの。タラの有名な裁断師が作った服なんだって。
ビデックさんは血色も良くて健康そうで本当によかった。
何の見返りもなくお兄ちゃんに手紙を届けてくれるビデックさんにはいつも感謝しているの。
いつかは彼にもちゃんとお礼がしたいな。
私がカブ港で世話してくれる人を探してみるから、お母さんの心配はしないで。
イメンマハに帰ってもずっと手紙を書くからね。お兄ちゃん、大好き!いつか絶対会えるって信じてる。
-アランズ