- 作曲の落とし穴 -
Trap of the Composition


オードラン著




序文

「作曲の道」、「休止符を作曲する」に続き、もう3冊目となる。 五線紙以外の紙で活躍している羽根ペンにもそろそろ慣れてきた。

振り返ってみると、人生の半分以上を作曲に捧げてきた。 これからは後世の作曲家たち-志望生を含む-のために 私の経験と知識を整理して残しておくのも悪くないという気になった。

前に出した「作曲の道」は、自分の内面から響き渡る歌に耳を傾ける方法、 「休止符を作曲する」は、余裕を持ちひと休みする方法についての内容だった。 今回の「作曲の落とし穴」は、自分でも知らないうちにやりがちなミスを防ぐためのもので、 私の経験をもとに作成したものである。

* 心に従え。

作曲の経験があまりない志望生や若い作曲家たちが最もしがちなミスのひとつは、 とにかく壮麗で美しく大層な音楽を作曲しようとすることだ。 私もまだ経験不足だった頃は、自分の心が導く音律を無視して格好良いだけの音楽を作るのに必死だった。 しかし作った本人が感動できない曲は、いくら格好良く雄大であっても他の人が感動できるわけがない! 作曲というのは自らが感じる心の旋律と感動を他の人にも伝えるために書く手段のひとつに過ぎない。 作曲のための作曲は絶対に避けるべきなのだ。


* 傲慢になるな。

作曲をするうえで必要な知識はあるだろうが、作曲自体は特別な技術や条件を必要とするスキルではない。 しかしときどき作曲という行為を選ばれし者だけができるかのように威張り、他の作曲家を蔑む人々がいる。 作曲はその気になれば誰にでもできるスキルだ。 また、共に音楽の楽しみを分かち合うために作曲するのであって、独占するためのものではない。 必ずしも謙遜する必要はないが、自分しかできないかのように威張ったり、傲慢にならないよう気をつけなければならない。

* 十分に理解せよ。

作曲スキル入門書から楽器の音色に至るまで、 作曲と関連した本を読んだことがあるならば、和音、拍子、音程、楽器の音色は作曲と決して無関係ではないということが分かるはずだ。 特に楽器はそれぞれが持つ特色と最も美しい音を出せる音程の範囲がそれぞれ異なるため、 この点を十分に理解していないと、自身が考える音楽を最も効果的にかつ美しく表現できない。 たまに楽器の違いを理解できず、その楽器に合わない音程を割り当てて満足できずにいる作曲家たちがいる。 このような作曲家たちは、なぜ自分の思った通りに和音が出ないのか知ろうともせず怒るのだが、 楽器と和音について十分に理解していればこのような失敗はしないだろう。

最後に

繰り返し言うが、今回の「作曲の落とし穴」に書いた内容は、誰でも知っているが同時に誰もがしがちなミスについて整理したものだ。 ミスは誰にでもある。重要なのは、すでに知っているミス、一度やったミスを繰り返さないために努力することだ。

上に記した内容はすべて、私を含め多くの作曲家が経験したことだ。 この本によって作曲を勉強している多くの者たちが自らを見つめ直せたならば嬉しい限りである。