- ある作曲家の人生 -
A Composer's Life




- 誕生

音楽界の3大巨匠と言われるカニュクスはイメンマハの普通の家庭で生まれた。 彼の母親クライルビは篤実なライミラク教の信者であり、タラ聖堂所属のリラ演奏者でもあった。 彼女は暇あるごとに自分の子どもたちにリラを演奏してあげたので、子どもたちは自然に音楽に触れながら育った。 学者たちはカニュクスが特にリラの独奏曲を多く作った理由は、 幼い頃からクライルビの音楽に触れ、影響されたからだと言っている。

カニュクスは幼い頃から音楽の才能を見せ始めた。 3歳のときはクライルビに連れて行ってもらった聖堂で、聖歌隊が歌う合唱曲を一回聞いただけで全部覚えたり、 4歳のときは自分の母親がリラを演奏する姿を見ては、リラの扱い方や弦を調律する方法を自ら身に付けたりした。

クライルビは息子の音楽的才能に気付き、 著名な音楽家を招待したり、音楽教室に通わせたりするなどして、息子に音楽を教え始めた。 後に見つかった彼女に日記を覗いてみると、幼いカニュクスは音楽を習って1年になる6歳のときに作曲が2ランクになったと書いてある。

- 出会いと別れ、そしてポーション

クライルビは息子のためにタラに移住した。 カニュクスの才能を知っている大主教は、彼をエフル・マククル1世に紹介した。 カニュクスはエフル・マククル1世の前で目隠しをしたまま楽器を演奏し、彼が見た事のない難しい楽節で レベルの高い即興演奏を披露した。

彼の奏でる音楽を聴いて感動を覚えたエフル・マククル1世は、カニュクスがまだ幼いにも関わらず彼を特別に王城オーケストラの音楽監督に任命した。 王城の支援を受けるようになったカニュクスはこのときから活発な音楽活動を始めた。そして、最初で最後の恋の相手、マリアに出会った。

王城オーケストラのソリストだったマリアとはお互い一目惚れし、交際を始めて未来まで約束したが カニュクスの音楽的才能が衰える事を恐れたクライルビにより、二人は強制的に別れてしまった。

この事により、カニュクスとクライルビの仲は疎遠になった。

悲劇はここで終われば良かっただろうに。運命の悪戯なのだろうか。親子の大喧嘩から数日後、 クライルビは馬車事故で亡くなり、カニュクスは愛する人を二人も失ってしまった。 カニュクスは虚しい気持ちを抑えきれず、このときからポーションに手を出してしまった。 (ほとんどの人が、ポーション中毒事件と言えば真っ先にカラジェックのことを思い出すが、 実はカラジェックよりカニュクスのほうが先にポーションに手を出し始めた。 ただ、カラジェック事件の反響があまりにも大きかったため、カニュクスのポーション中毒事件は世間にあまり知られていないだけだ。)

ポーションに手を出した10代の後半から40代までは彼の暗黒時代だったが、爆発的な創作の時期でもあった。 'アルケトラブ'、'フルートカンタービレ'、'海辺カンタータ'、'魔女笛'など今でも人気を集めている作品が作られた。 また、最後の作品であり、マリアとクライルビのために作ったという'鎮魂曲'もまさにこの時期に作られた。

- 彼の死について

カニュクスの死はあまりにも突然に訪れた。

ある学者たちは、彼はポーション中毒ではなく、作品を作る度に自分の命を少しずつ削って曲に込めていたので 作品の質はだんだんと落ちていき、爆発的に作品を作り出した直後、命を全うして死亡したと主張している。

反面、他の学者たちは彼が亡くなる前に最も完成度の高い作品を作り出しており、 彼が夭折した理由は、愛する人たちとの別れによる心的衝撃やポーション中毒による健康悪化のためだと主張している。

ともかく、皆に尊敬されていた偉大な作曲家が、実はポーション中毒者だったというのは実に衝撃的であり、 国民がパニックに陥る事を懸念した王城は、この事実が世間に広がる前にカニュクスの作品を販売禁止にした。

今となってはその禁止令も廃止され、カニュクスの作品に触れる事ができるようになっているが、それ以前は彼の名前すら触れてはいけない時代が続いていた。

- 後世に与えた影響

ポーション中毒により苦しい晩年を送ったが、彼が後世の作曲家たちに与えた肯定的な影響については誰も否定できないだろう。 彼は古代の種族が残した各種音楽様式と知識を吸収し、現代の音楽を加え、独創的な作曲世界を繰り広げた。 これは、オードラン、ケヌーク、メイランなどの有名作曲たちが新しい作曲の方法やジャンルを作り出すに多大な影響を与えた。

また、彼が作曲した音楽を聴いて感動した人々の中には、自分の子どもの名をカニュクスと付け、彼への熱き愛情を示したりした。

- 終わりに

彗星のごとく現れ、波乱万丈な人生を送り、風のごとく去って行ったカニュクス。 彼の偉大な音楽と業績はこれからも永遠に輝き続けるだろう。