作者未詳の歌 -上-
Unknown song -1-


ケヌーク著




はじめに

イリア大陸では出所の分からない楽譜が発見される時がしばしばある。 いつ、誰が、どこで、何のために作ったか分からない物。

我々発掘団もイリアで発掘作業をしていた際、比較的状態の良い物をいくつか見つけた。 幸いにもこれら楽譜は、名の知れた-そして性の悪い-遺物のように、自分を見つけた人間に呪いをかけたりしなかった。 むしろ、この楽譜を使って演奏をしたり歌を歌ったりすると疲れが取れ、すっきりとした気分になれた。 発掘団の一部には、これは過去の人たちからの贈り物とも言う人もいた。

話が長くなった。

ともなく私はこの美しく良い歌を皆にも共有するため、復元が上手くできたいくつかの楽譜の歌をこの本にまとめようとする。 どうか、お役に立つ事を祈りながら…。

(本を書き終えた後に追記したのか、ページの片隅にわりと新しい内容が書いてある。)

+ 歌が長すぎるため、2冊に分けてまとめたのだが、あの間抜けなトムのヤツが ザルディン温泉でサルに本を奪われてしまった!まったく!使えないヤツ! 残念ながらその本は一冊しかないので、続編が気になる人は温泉ザルを上手くあやして本を取り戻すように。

XXの地

神々の棲む島の谷
雹も雨も雪も降らず
激しい風さえ息を殺してとどまる場所
しっとりと柔らかい芝生が広がる野原。

ああ!美しき女よ!私と一緒に行こう
サーオィンの夜、あの美しい谷へ
私の故郷、不思議な国へ。

人々の顔には笑顔が咲き乱れ
合わさった頬と頬は薔薇色に染まり
焚き火は消える事のない、それはそれは楽しい場所へ。

野原に咲く深紅の花びらは
小さい星のように点々と舞い散る
ティルナノイがいくら美しいといえども
我々の故郷には敵わないだろう。

他所でどんなに甘い水が流れるといえども
この国の谷を流れるのはまるで蜜の様
皆に賛美されて然るべきこの国は
誰も年を取らない国
死も恐怖も存在しない愛の国。

我々には人々の姿が見えるが
我々の姿は誰にも見えない
死の女神が真っ黒の翼を広げ
彼らの目は塞がれ、我々の姿を見る事ができないのだ。

ああ!私の美しき女よ!
私の所へ来い、私の燦爛たる地へ来い
新鮮な肉と乳を思う存分堪能できる
懐かしき人たちに逢える
そこは亡者の地。